同じ屋根の下で会話を交わし、休日は一緒に外出する。生活サイクルが異なる2人にはそんな何げない日常が大切だ。
「しばらくは2人の時間を楽しみたい」。学校教員ミクさん(23)と、ブライダル業界で働くヒナさん(19)=いずれも仮名=は1月、京都府亀岡市の「パートナーシップ宣誓制度」を利用し、人生の新たなスタートを切った。2人とも戸籍上は女性。
京都府福知山市出身のミクさんは幼い頃から周囲が求める「女の子らしさ」に違和感があったといい、鹿児島県姶良市出身のヒナさんは中学時代に「異性より同性の方がいい」と気付いた。
SNS(交流サイト)で出会い、メッセージや電話でやりとりを重ね、鹿児島と関西を行き来した。「遠距離(恋愛)を終わらせたい」。
2022年春、それぞれ学校を卒業するタイミングで同居を始めた。亀岡市を選んだのは仕事をしながら暮らしやすいことと制度の存在が決め手だった。
宣誓すれば、市営住宅への入居や市立病院でパートナーの手術同意などが可能になり、新婚世帯の住宅購入費用補助の対象にもなる。
「これから先、何かあった時に安心はある」と実感する。
ただ、男女の結婚との違いを思い知ることも増えた。職場の共済に配偶者として加入することはできず、結婚祝金の支給もかなわなかった。共同で特別養子縁組を結ぶこともできない。
異性婚では当たり前の権利の多くが認められておらず、不平等だと感じる。
「わざわざ結婚しなくても、好きな者同士一緒にいればいい」との言葉も聞こえる。それでも2人が宣誓したのは、「互いの関係性を証明できる『何か』が欲しい」と素直に思ったからだ。
2人の門出を親族や友人をはじめ、周囲は好意的に受け止めてくれた。
ミクさんは最近、一部の生徒に「結婚」を報告した。
真剣に話を聞く姿勢がうれしかった。「自分のような人間が近くにいると分かれば、考え方も変わるはず」。ヒナさんも「もっと身近な存在になれたら、社会も変わっていくのかな」。
身の回りの疑問にも2人で積極的に声を上げていこうと思っている。
来年、結婚式を挙げる予定だ。「猫を飼いたい」「子育てもしてみたいな」。夢は膨らむ。
■「存在そのものが、多様性を認める自治体からのメッセージになる」
LGBTQ(性的少数者)などのカップルを公的に認めるパートナーシップ制度は2015年、東京都渋谷区が全国初の条例を制定し、今年1月時点で全国255の自治体が導入している。
女はいいな俺だって産みたい
市会議員にトランスジェンダーが居るしな